「グッバイ・クルエル・ワールド」感想 タイトルとは裏腹に只々バイオレンスで爽快な作品

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「さよなら渓谷」「まほろ駅前多田便利軒」の大森立嗣 監督が手掛け西島秀俊さん斎藤工さん三浦友和さんら豪華キャストが共演したことでも話題になった「グッバイ・クルエル・ワールド」キャストが演じるアクの強いはみだしものの姿は必見です。


出典元:映画グッバイ・クルエル・ワールド

監督:大森立嗣
脚本:高田亮
キャスト
安西(西島秀俊)
矢野(宮沢氷魚)
美流(玉城ティナ)
蜂谷(大森南朋)
萩原(斎藤工)
武藤(宮川大輔)
浜田(三浦友和)
オガタ(鶴見辰吾)
組長(奥田瑛二)
飯島(奥野瑛太)
他…

「グッバイ・クルエル・ワールド」あらすじ

年齢も素性もバラバラの男女がヤクザの資金洗浄の現場から金を強奪する為に一晩だけ集まり計画は実行される。

金を奪われたヤクザたちも勿論黙ってるはずもなく1億円をめぐってクズどもの醜い争いが始まるのだった。

グッバイ・クルエル・ワールド感想(ネタバレ)

キャストの顔ぶれやビジュアルだけで思わず興味をそそられた今作の感想は良い意味で期待を裏切ることなく皆さんが見事なクズっぷりを演じられてました。

雰囲気もバイオレンスなんだけど何処かポップで強盗に使う車が派手な水色のサンダーバードだったりそう言うノリが好きな人には刺さるんじゃないでしょうか。

キャストも豪華なんだけどひと癖あるメンバーで斎藤工さん演じる萩原なんてヤリ過ぎ感はあるけどハマってましたね。

宮川大輔さんの武藤も素のような演技が自然だったし、個人的に奥野瑛太さんの飯島なんてリアルでしかなかったです。

内容は強盗のヤマで一度だけ集まった男女の群像劇で各々が主人公で、共通しているのは皆、居場所のない人間です。

特に、安西、蜂谷、矢野、美流の4人はそんな自分の生き方にどこか疑問や不安を抱いてるようにも見えます。

冒頭の強盗事件でヤクザに追われるハメになった犯人一同の追い詰められるまでの結末が描かれてるんだけど、誰一人としてまともじゃない、そんなクズな人間性を晒しまくりの群像劇は時にリアルに時にドラマティックな演出で決してまともとは言えないんだけど観てる側は感情移入してしまいます。

ここからネタバレです。

強奪された金を取り戻そうとするヤクザのもとに金で癒着した悪徳刑事の蜂谷が現れ彼らは強奪を企てた1人がホテルの従業員の矢野だと突き止め吊るし上げます。

一方、もう1人の計画者である風俗嬢の美流は実行犯の萩原に借金の借りがあったため散々利用された挙げ句、重症を負わされたうえ彼氏の武藤を殺されます。

矢野から芋づる式に捕まった美流は、萩原に恨みがあった為ヤクザに協力する形で矢野と2人で萩原に復讐します。

萩原を始末して蜂谷とヤクザたちは残る実行犯の安西、浜田を追います。

その頃、元ヤクザの安西は強奪した金で家族との復縁のため義理の父の旅館を手伝っていましたが、ある日街でバッタリ昔の舎弟だった飯島と出会います。

落ちぶれて行き場のない飯島に「過去を暴露する」と脅迫された安西は仕方なく旅館で彼を働かせますがすぐにバレてしまい安西は街を追放されます。

何もかも失い安西は一度断った浜田の裏稼業の依頼を引き受けます。

それはある政治家の裏金を強奪すると言うものでした。

浜田の若い部下とともに計画を実行していた安西でしたが魔が差した部下は暴走し金を奪おうとします。

そこに運悪く安西を追ってきた矢野と美流が現れ現場は様々な思いが入り混じった血みどろの舞台に変わります。

安西、矢野、美流はお互いで撃ち合いながらも、何処か共通点を感じたのか一線は越えることなく別れます。

手傷を負いながらかろうじて逃げ切った安西は身を案じやってきた浜田をなぜか銃で撃つと家族のもとへと只ひたすら歩を進めます。

夜が明け妻子の元へ姿を現す安西でしたが妻はそんな夫を見捨てて去っていき彼は1人海辺に歩いて行くとそこには矢野に刺された蜂谷の姿がありました。

ヤクザ時代からのくされ縁だった2人は海辺に腰を下ろしながらヤクザにも刑事にも何者にもなれない似た境遇の自分たちのぶさまな姿を笑い飛ばします。

そんな行き場のない2人に迫るヤクザ達、

静かな海辺に空っぽで感情の伴わない銃声だけが響き渡るのでした。

観てる人がどのキャストやキャラが好きかにもよるんだろうけど西島さん演じる元ヤクザの安西は人間味があり感情移入しやすいキャラでした。

この作品のタイトルにも一番忠実に沿ってるし、最終的には安西を軸に終わっていきます。

安西とともに物語のもう一つの軸となるのが宮沢氷魚さんと玉城ティナさん演じるハチャメチャカップルの矢野と美流で2人とも空っぽで行き当たりバッタリの人生を送ってます。

どちらかと言えば正統派なイメージの2人がこの作品では血みどろのサイコカップルを演じ、ある意味で新境地を切り開いたようにも見えます。

2人は金欲しさにヤクザの金の強奪の計画を立て借金取りの大人達を利用しようとするんだけど結局は逆に良いように使われてしまう被害者です。

でも彼らには感情がなく生きることにも執着がないからヤクザや刑事に言われるがままサイコな殺人マシーンになってしまいそこに生きがいを見出してしまいます。

空っぽでサイコな2人が躊躇なく人を殺す姿は狂ってるんだけどどこか爽快ではあります。

最後のほうなんて何故か事件にほぼ関係ない浜田の部下の若者が銃を持ったことで衝動に火がついてドンパチ始めちゃったりメチャクチャな展開になるんだけどそれはそれで吹っ切れてて面白いです。

その他にも、矢野がある意味で恩人でもある蜂谷を突然刺してみたり、安西が浜田を撃ったりよくわからない行動をとるんだけどバイオレンスだし良いかって片付けてる自分がいて何処かおかしくなってるのがわかります。

結局内容は只々バイオレンスで悪く言えばそれ以外に伝わるものはないんだけど爽快ではあります。

最後、死にかけの2人が海辺に行き着くんですが、そこのシーンでは途中で出てくる奥田瑛二さん演じる組長の昔拉致られた時、横で死んでる奴の匂い云々の与太話が蘇ります。

きっと死を間近に感じ母親を思い出しながら海に向かったのかなあとかそこはかとない切なさを漂わせて終わるんだけど決して悲しさはなく最後までスカッとした気分でした。

あれを爽快と言ってる自分はもうおかしいのかも知れません。

そんな自分の中の凶暴さや残忍さがある意味で満たされる作品でした。

ところで最後の銃声は1発しか聞こえないんだけど蜂谷は助かったのかな・・

個人的にあそこは2発にして欲しかった・・どうでも良いですね。

タランティーノなどのクライムムービーが好きなら楽しめると思いますよ。

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