映画「ザリガニの鳴くところ」感想 ミステリー要素のある恋愛映画で大自然の映像美が素晴らしい作品

ミステリー

ディーリア・オーウェンズ原作の小説をオリヴィア・ニューマン監督によって映画化された今作「ザリガニの鳴くところ」不思議なタイトルから想像するにどんな映画なのか!?


出典元:ソニー・ピクチャーズ映画

監督:オリヴィア・ニューマン
脚本:ルーシー・アリバー
キャスト
カイア幼少期(ジョジョ・レジーナ)
カイア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)
テイト(テイラー・ジョン・スミス)
チェイス(ハリス・ディキンソン)
他…

映画「ザリガニの鳴くところ」あらすじ

1969年の秋、ノースカロライナの湿地帯で男の変死体が発見され周囲の人間は湿地に1人でひっそり暮らす少女カイアに容疑の目を向けた

遺体に付着していた赤い繊維がカイアの家にあった帽子と一致したことで警察は彼女を勾留する、そんな彼女のもとに弁護士のトムが現れカイヤは裁判で無実を証明するために戦うことになるが・・

映画「ザリガニの鳴くところ」感想(ネタバレ)

「湿地の娘」と呼ばれ皆から忌み嫌われる存在のカイヤが容疑者として勾留された後、法定に立つところからこの物語は始まりますが、作品の大部分をカイヤがこうなるにいたった経緯や生い立ちの回想シーンが締めてます。

内容は決してハッピーとは言えないんだけど美しいノースカロライナの大自然に見守られながら育つ少女の人生は何処か穏やかで平和に満ちて見えます。

作風はミステリーとロマンスの融合と言った雰囲気で特に恋愛要素が強めです。

60年代のアメリカの田舎の雰囲気と大自然の美しい描写の中で繰り広げられるラブストーリーは爽やかで切ない物になってます。

カイアの淡い恋愛の記憶を辿りながら事件の真相に迫って行く展開は淡々としつつも、通常のミステリーとはまたひと味違う味合いで最後まで息切れすることなく楽しめました。

主人公のカイアを演じたはジョジョ・レジーナとデイジー・エドガー=ジョーンズでそれぞれの年齢のカイアを演じられてます。

幼少期のカイアはジョジョ・レジーナでおそらく今作が映画初出演となります。

初出演とは思えない落ち着いた演技は存在感十分で今後が楽しみな俳優です。

10代〜中年期をデイジー・エドガー・ジョーンズが演じてて彼女は2020年にアイルランドのテレビドラマ「ふつうの人々」で注目を浴び今作でカイア役に起用されます。

彼女の演じるカイアはか弱い中にどこか芯の強さがあって、まさに湿地で生きる浮世離れした少女と言った感じで良かったと思います。

その他の主演作に「フレッシュ」があります。

カイアの恋人役の2人、テイト役はテイラー・ジョン・スミスで包容力のある優しい役どころを演じられてます。

主な出演作に「ブラックライト」「シャドウ・イン・クラウド」があります。

もう1人の恋人役チェイスのハリス・ディキンソンは、テイトとは正反対なクールで臆病な役どころをこなしてます。

主な出演作に「ブルックリンの片隅で」「マレフィセント2」があります。

個人的には雑貨屋のジャンピンとメープル演じたスターリング・メイサー・ジュニアとマイケル・ハイアットの慈悲深い人柄を表現した演技にホッコリさせられました。

ここからネタバレです。

裁判で明らかになっていく「湿地の娘」カイアの素性はとても悲しいもので、父の暴力から逃げるように去った母や兄と離れ離れになった幼いカイアは、父から逃げるために湿地の秘密の場所に隠れる日々を送るようになりますが、遂にそんな暴力的な父もカイアを置き去りにして消えてしまいます。

学校で学ぼうとしても町の生徒にバカにされまともな教育を受けれないカイアを見守ってくれたのが町の雑貨屋のジャンピンとメープル夫妻でした。

夫妻と優しい湿地の自然に助けられ成長したカイアはある日湿地でかつての兄の親友で自分とも付き合いのあったテイトと再会を果たします。

久しぶりに再会した2人は始めはぎこちなかったもののすぐに打ち解けテイトはカイアに文字の書き方を教えます。

カイアは見る見る、読み書きを覚えると図書館の本をあっという間に読破するほどになり、母親が自分を捨てた理由が知りたいと言った少し違った角度から生物学に興味を持ちます。

カイアとテイトは次第に惹かれ合っていきますが、そんな中テイトは大学進学の夢のため町を離れます。

恋人のようだったテイトは家族のいないカイアの心の隙間を埋める存在で、そんな彼が突然いなくなったことは彼女にとって生きる意味を失うにも等しく彼女は生物学の本を出す夢から逃げ出します。

ただなんとなく絵を描きながら日々を送るカイアでしたが、ある日湿地の浜辺で仲間たちと戯れるチェイスと出会います。

はじめは馴れ馴れしいチェイスを軽くあしらっていたカイアでしたがある日、物見櫓へ案内されたことで仲が深まります。

と言うのも、櫓の上から見る湿地の景色は普段の地上での様子とは違い友達の新たな一面のようにカイアを魅了したからです。

更に、チェイスは普段は臆病な本当の自分を隠して過ごしていると言う弱さをカイアには正直に打ち明けました。

親密になった2人は遂に一線を超えますが幸せは永くは続きませんでした。

ある日、町でたまたま出くわしたチェイスには婚約者がいて彼はそのことを何とか取り繕おうとしますが、カイアは許す筈もなく逆上したチェイスはカイアの家を荒らした挙げ句、暴力を奮います。

そんな折、大学を卒業したテイトが帰郷してその事を知り彼女の相談に乗ろうとしますが、カイアはテイトをも拒みます。

彼女にしてみれば2人とも自分を裏切った町の男に違いないからです。

それでもテイトのアドバイスだけは実行して彼女はグリーンビルでの出版社との打ち合わせに参加します。

赤いニット帽と言う殺人の物的証拠が上がって不利なカイアの裁判の勝機は事件当夜のアリバイのみに掛かっていました。

幸運にもカイアはその日グリーンビルでの打ち合わせに参加していて翌朝までのアリバイがあり、物理的に犯行現場での凶行は不可能だと証明されます。

更にトム弁護士と証人のジャンピンらの説得もあり、傍聴席の大半を占める町の人間も偏見を捨て色眼鏡で見ることなく公平な裁判が行われた結果、

カイアは見事無実を勝ち取りテイトとの幸せな人生を歩むのでした。

時が経ち年老いたカイアはある日、湿地で母の幻と出会います。

その後カイアは母に導かれるようにボートの上で息を引き取って、船着き場には涙を流し遺体にすがりつくテイトの姿がありました。

暫くしてテイトがカイアの遺品を整理しているとそこには見たことのない1冊の本があり、そこにはチェイスを殺害したカイアの自供とも取れる文面と挿絵が描かれていました。

更に裏表紙の細工した部分にはチェイスが最期に身に着けていたとされる貝殻のペンダントが入っていました。

それを見たテイトは卒倒しそうになりながらも2人の秘密を守るように貝殻を浜辺にそっと返すのでした。

と言う訳でカイアは裁判で無罪になりその後テイトと幸せな人生を送るんですが、事件の真相にまつわるカイアの知られざる事実を知らされるハメになったテイトの気持ちを察すると筆舌に尽くしがたいです。

きっと人の良いテイトはカイアの秘密を墓場まで持って行く覚悟をしながら「何も殺さなくても良いのに〜」とか思ったに違いありません。

本当にカイアが犯人だったとすると人間業とは思えない事をやって退けたわけで、まさに皆が恐れた人知を超えた存在です。

湿地で暮らす人々と言うのはそんなどこか近寄りがたい自然の一部のような存在でなければいけないのかも知れないし、受け入れることで何か特別な世界に導いてくれるのかも知れない。

そんなラストシーンからは今現在、町と湿地の間で偏見や格差があるとは思えないけど、何かしら見えない壁みたいなものがあるのかも知れないと思わされました。

個人的にはあの終わりの裏切り方は嫌いではないです。

ただ気になったのがカイアが無実になったのは良いとして、そこでチェイスが自殺として片付いてるのは安易な気がしました。

自然な流れとしてテイトに容疑が掛かると思うんだけど、そうなるとキリがないって事かな・・

因みにザリガニってあんなカエルみたいな鳴き声なんですね。

どうでも良いですね。

「ザリガニの鳴くところ」壮大な大自然の映像美と爽やかなラブストーリーに少し切ないミステリー要素が絶妙な良作でした。

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