「人間失格」や「斜陽」と言った名作を生んだ天才小説家でありながら私生活では破天荒で酒や薬物、女遊びで身を滅ぼした作家としても知られる太宰治。
そんな彼の晩年期を描いた映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」
写真家としても知られる蜷川実花監督がメガホンをとり小栗旬さんが主演を務めたこともで話題になりました。
太宰治を支えた3人の女達を演じた女優陣や脇役の俳優陣も豪華でファンは必見の作品です。
監督:蜷川 実花
脚本:早船 歌江子
音楽:三宅 潤
キャスト
太宰治(小栗旬) 山崎 富栄(二階堂ふみ) 津島 美知子(宮沢りえ)
太田 静子(沢尻エリカ) 佐倉 潤一(成田凌) 坂口安吾(藤原竜也) 三島由紀夫(高良健吾) 他…
「人間失格 太宰治と3人の女たち」あらすじ
酒や薬や女との自殺未遂騒ぎで文壇を騒がせている流行作家、太宰治
妻の津島美知子(つしまみわこ)と2人の子供がありながら愛人の太田静子(おおたしずこ)ともよろしくやっている。
静子は作家志望で伊豆の富豪の娘、おしとやかと言うよりは自由奔放な華やかさがあり結婚の経験もある。
小説の題材に困っていた太宰は静子の日記をネタにしようと彼女と深い関係を持つ。
静子との蜜月のひと時を過ごした太宰は東京に戻ると、バーで出逢った未亡人の山崎富栄にも近づく。
妻の美知子に3人目の子が宿っているにも関わらず。
その頃、伊豆の静子も妊娠していた。
子供の事で静子と弟の薫は話を付ける為に太宰の行きつけのバーを訪れると、そこに富栄も現れる。
「愛されない妻よりも、ずっと恋される妻でいたい!」という思いの静子
「ヴィヨンの妻はいます!あんなふうに尽くして尽くして愛する人、私。。いると思います。」と言う富栄
形は違うものの太宰を慕う気持ちは同じ2人
うどんを啜り談笑する2人は意気投合したかの、ように見えたが。。
その夜、店の外で喀血をする太宰を見て病気の事を知る富栄だったが、そんな太の全てを命懸けで愛する覚悟を決める。
「戦闘開始」と呟く彼女は恋の泥沼へとハマって行くのであった。。
甲斐甲斐しく太宰の世話をする富栄と太宰の愛は深まって行き、富栄の独占欲は次第に強まって行く。
その一方で富栄の愛の深さに太宰は押し潰されそうになる。
静子が女の子を出産した事で名前を付けて欲しいと弟の薫が富栄の住まいを訪れた事で「斜陽」のモデルが静子で、2人の間に子供がいる事もそこで初めて知る事になる。
憤慨した富栄は半狂乱で服毒自殺を図る。
太宰はいつ自殺するかも分からない富栄との不倫関係を絶つことも出来ないままダラダラと関係を続けていた。
ある日、2人で抱き合っている現場を正妻の美知子と娘に目撃される。
「お父さんはお仕事だから」とその場を去る妻と子供の後ろ姿を見送る太宰は不安と罪悪感に駆られていた。
そして、その夜、家族の寝ている傍で睡眠薬を過剰摂取して自殺を図る。
翌日、美知子は医者に睡眠薬の事よりも肺の病気が末期状態であることを咎められる。
太宰も傍らで横になりながらその事実をぼんやりと受け止めていた。
「斜陽」の売れ行きは好調で子供でも題名を知っている程、世の中に広まっていた。
しかし、皮肉にもその事で税務署に目をつけられ金銭感覚のない太宰は未納の所得税を支払えず、その莫大な金額に追い込まれてしまう。
追い討ちを掛けるように静子からは斜陽の表紙に名前を載せて欲しいと言う要求が来る。
おそらく静子なりの慰謝料の追加の請求だったのだろう。
税金の件で知らせを受け太宰は家に戻ると美知子が妹の葬儀で実家に帰る準備をしていた。
美知子は「もう帰って来なくて良いから、家庭に戻っても意味がないから」と太宰に諦めたように言い放つ一方で
余命幾ばくもない太宰を奮起するように
「壊せば良いんです!そうすれば書きたいものが書ける」
「身体を治してここに帰っても尊敬はしない」
「あなたは、もっと凄い物が書ける!」
と言った。
数日後、葬儀から帰った美知子は富栄によって綺麗に片付けられた家の様子を見て哀しみに押し潰されそうになる。
子供達と戯れる事で何とか平静を保とうとするが、その夜家に戻って来た太宰を、拍子にとは言え追い出してしまった。
行くあてもなくトボトボと雪の降り積もる道を歩く太宰は喀血し、雪を染める血を日の丸に見立て
「バンザーイ」と人目も憚らず叫びそのまま仰向けになったかと思うと、呼吸困難に陥り白目を剥いて意識を失った。
死の淵を彷徨う太宰を「修治さん!」と富栄の声が引き止める!
急死に一生を得た太宰はそれからと言うもの取り憑かれたように執筆活動に勤しんだ。
美知子の言葉通り全てを壊すように。
そして、執筆を終えた太宰と富栄は紫陽花で満開の玉川上水の畔にいた。
「死んで太宰と永遠に結ばれたい」
いつもそう思っていた富栄は嬉しそうにお互いの手首を赤い紐で結びながら、「外れない結び方を調べました。」と屈託のない笑みを浮かべている。
一方の太宰は生への執着からか止めようと説得するが、富栄の決心は固く太宰も諦めたように微笑んだ。
そして、2人は川の流れに身を投じた。
数日後、2人の遺体が上がり太宰の家の周りには記者達の人だかりが出来ていた。
閉ざされた家の中、美知子は書斎で太宰の遺した遺書を読みながらひとしきり涙を流すと意を決したように雨戸を開ける。
そして、記者たちを尻目に晴れ晴れとした様子で洗濯物を干し始めるのであった。
書斎の机には人間失格の原稿と共に遺書が置かれていてそこには「お前を誰よりも愛していました」と書かれていた。
伊豆の静子の住まいでも太宰の急逝を受けた記者たちが群がっていた。
太宰との間に出来た娘、治子を抱きながら一生分の恋をしましたと応える静子の様子はどこか誇らしげであった。
その傍らには、太宰と共に斜陽を執筆した日々を綴った「斜陽日記」が積んであった。
仄暗い水の中を沈んでいく太宰、水中を漂いながら突如目を見開く彼は何を見て何を思ったのか。。
「人間失格 太宰治と3人の女たち」感想や魅力
「ヴィヨンの妻」「斜陽」「人間失格」を執筆した晩年の太宰治と彼を支えた3人の女達の泥沼の愛憎劇を、蜷川監督らしいカラフルで独創的な映像美で演出した作品です。
作品の為に自分の人生を投げ出すと言えばカッコ良く聞こえますが、
家庭や小説家としての苦悩から逃げ出す為に酒や薬、女に走るんだけどそこでまた苦悩する羽目になり、3人の女達に翻弄されまくる。
気に入った女性にはすぐに近づく恋多き太宰治は、正妻の美知子と2人の子供がありながら
静子と富栄の2人と不倫関係になってしまいます。
最初は軽い気持ちで弄ぼうとしたのが、いつの間にか振り回されてしまって、最終的には身を滅ぼしてしまいます。
そんなどうしようもないダメ男だけど、女の心を掴んで離さない色気たっぷりな太宰治を小栗旬さんが好演する事で、ますます魅力的になってしまいます。
そして、太宰治に魅了される3人の女達のを演じるのは宮沢りえさん、沢尻エリカさん、二階堂ふみさんの、豪華な女優陣
正妻の美知子は太宰治の才能に惚れた女
静子は太宰よりもむしろ太宰の芸術やステータスに恋をする女
富栄は太宰の全てを独り占めにしたい女
それぞれの魅力を宮沢りえさん、沢尻エリカさん、二階堂ふみさんが体当たりで表現されてます。
特に二階堂ふみさんの演技は鬼気迫るものがありました。
太宰を死んでも手放したくない、死ぬなら一緒に死にたいと言うヤミっぷり、ヤンデレって奴ですかね。
そんな怖さを見事に表現されてました。
あとは、やはりベテラン女優宮沢りえさんの、ヴィヨンの妻さながらの美知子夫人の弄らしさは素敵でした。
祭りで富栄との逢い引きを目撃した後、寝床でもう耐えられないと一瞬、弱音を吐くんだけど
障害のある長男、正樹を見て何とか踏み留まるところなんてグッと来るものがありました。
一説には、太宰治の自殺の原因はその長男の事が原因とも言われてたりするんですが、
美知子夫人にとっては心の支えだった訳です。
後半で太宰の死期を悟って、作品の為に家族を捨てなさいと言うシーンからも
愛する男に最後まで小説家としての人生を真っ当して欲しいと言う妻の想いが伝わってきました。
小栗旬さんも全編を通して、女性がハマってしまうダメだけどセクシーなモテ男を熱演されです。
酒好きの女たらしだけど作品に対する想いだけは熱いそんなカッコ良さを感じました。
ラストで暗い水中を漂いながら突然目を見開くシーンがあるんですが
無理心中説も噂された太宰治の生への執着のようなものを感じました。
主題歌のカナリヤ鳴く空のスカパラの音学とチバユウスケさんの歌声も太宰治の世界観にバッチリハマってました。
色んな意味で蜷川実花さんならではで独特の演出に翻弄された作品でした。
映像美が凄い!
どうしようもなくダメ男かつモテ男の太宰治とそれに惹かれる3人の女性たちのドロドロとした愛憎劇
これを普通に映画にしただけでは流石に観てる側が落ち込んでしまうわけですが、
蜷川監督特有の映像美でそこを中和、いやそれ以上に美しく耽美な物に仕上げてます。
太宰が喀血する場面が全編を通して出てくるんですが、そんな場面ですら美しく表現されています。
街並みや自然、建物の内装や着ている服なども古き良き昭和の雰囲気をカラフルな色合いで表現してます。
昭和初期って古いイメージなかったけど時代は着実に変わってるんですね。
特に印象的だったのが富栄の住まいの4枚扉の付いた窓から漏れる光が十字架のようで教会のように見えたり、
太宰が雪の上で仰向けで死の淵を彷徨うシーンなども
人間失格の宗教的な側面を演出してるように感じました。
後半で取り憑かれたように執筆するシーンでは太宰のいる部屋の空間がエフェクトで徐々に壊れて行くような演出がなされていて
何もかもをぶち壊して命がけで執筆する鬼気迫る姿を独特な雰囲気で表現してました。
ラブシーンがエロい!
この作品の売りでもある濃厚なラブシーンは3人の豪華女優陣が体当たりで挑まれてます。
沢尻エリカさん演じる静子とのシーンは、直接的じゃ無いものの蜷川監督らしい、華やかなエロスを演出されてました。
私が印象的だったのは男と言う事もあり、やはり二階堂ふみさん演じる富栄とのラブシーンですね。
出会ってすぐのキスシーンも野獣のように激しく
その後の濡れ場も顕になった胸や、動き方も艶めかしくメチャメチャ興奮しました。(〃艸〃)
妻の美知子役の宮沢りえさんとの絡みは、燃え上がるような激しさはないもののあれは、あれでしっとりしたエロさで良いですなぁ~(オイオイ)
最初は太宰から手を出したとは言え、3人の女性達にある意味翻弄されてしまう訳です。
富栄との絡みなんてもう廃人状態ですよ。(付き合うのを遠慮したいタイプ)
そんな色んな趣きのエロスを味わう事ができました。
脇役も豪華!
この作品のもうひとつの魅力が、豪華キャストなんですが、脇を固める役者さんも藤原竜也さん、高良健吾さんなど
登場するのは一瞬だけど凄い顔ぶれ!
そう言えば監督の蜷川実花さんもバーテン役で出演されてましたね(笑)
友で良きライバルの坂口安吾さんとの絡みなんか普段の小栗旬さんと藤原竜也さんもこんな風に役者談義をしてるのを連想しちゃいました。(^^)
高良健吾さん演じる三島由紀夫が弱さで同情を買って小説を見せ物にする、太宰の文学は嫌いだと批判するシーンがあるんですが、
「ここに来て批判してるって事は俺の事が好きなんだ」と太宰は返します。
実際にこれに近いやり取りがあったようで、当時にタイムスリップしたような感覚に陥りました。
対極に位置する2人のようで、根底には弱さを持ち合わせていたんでしょう、太宰治の死から22年後三島由紀夫も自ら命を絶ちます。
以上「人間失格 太宰治と3人の女たち」のあらすじや感想、魅力をまとめた記事でした。
太宰治ファンや読んだ事ないけど興味がある人、キャストのファンの人にはオススメ作品だと思います。
最後までお付き合いくださりありがとうございます。
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