「LAMB/ラム」感想 退屈なようで実は味わい深く良い意味で掴みどころがない作品

ホラー

「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」などの製作に携わっていた経験を活かし「LAMB/ラム」が長編デビューとなるヴァルディミール・ヨハンソン監督自分のやりたい事をそのまま形にしたそうです。

出典元:シネマトゥデイ

監督:ヴァルディミール・ヨハンソン
脚本:ショーン、ヴァルディミール・ヨハンソン
キャスト
マリア(ノオミ・ラパス) イングヴァル(ヒルミル・スナイル・グズナソン)
ペートゥル(ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン)

「LAMB/ラム」あらすじ

アイスランドの広陵とした雰囲気の牧場で暮らす羊飼いの夫婦、ある日飼っている羊の中の1匹から異様な姿の子供が産まれる。

2人はその子供を「アダ」と名付け育てて行こうと決意をするが・・

「LAMB/ラム」感想(ネタバレ)

「LAMB/ラム」の感想はと言うと、一言で表せないどこか味がある作品って感じです。

淡々と進んでいくストーリーはセリフや音楽も少なく特にこれと言った山場もなく終盤まで控えめなトーンで進んで行くんですが、ラストに衝撃的な展開が待ってます。

序盤は謎の生物が産まれて来た事だけを伝えて中々その全貌を明らかにしない、体の部分は隠すように包んで大事そうに抱えてるんだけどなんとなく想像しながら観ていくと「やっぱりね」なビジュアル、

顔の部分だけ羊を合成したようないかにもCGの合成は予想を下回るクオリティでもっと醜悪な姿を想像してた私は裏切られた感はありました。

しかし見た目はさて置き、物語の方は淡々としてるのになぜか観る者を惹き込みます。

理由としては役者の演技が素晴らしくその演技力や映像の表現力が106分と言う時間を感じさせませんでした。

主演のマリア役は「ミレニアム」シリーズのノオミ・ラパスで実際に幼少期にアイスランドの牧場で育ったこともありこの役は彼女のルーツに戻ったとも言えるのではないでしょうか。

夫イングヴァル役はヒルミル・スナイル・グズナソン、ペートゥル役はビョルン・フリーヌル・ハラルドソンで2人ともアイスランドの俳優です。

キャストともに存在感を放っていたのがある意味主役とも言える羊達で羊以外の犬や猫なども本当に演技してるかのような表情は人間のカメラの手腕とは言えそのシーンの状況や感情が伝わってくるようでした。

また、どこか寂しげでダークなんだけどアイスランドの美しく雄大な自然の映像は作品の雰囲気にマッチしていました。

音も余計な音楽がなく動物の声や物音も自然の音が活かされててそれがよりいっそう臨場感を伝えてくれます。

ここからストーリーに関しての感想です。

異様な姿の子供が産まれたと言う状況にまず私は下衆な詮索をしてしまいました。

人間のモラルにおけるタブーを冒した的なヤツです。(同じように思った人もいそう)

それにしちゃ奥さん冷静だなぁとか疑問に感じながら観ていると子供が育っていき、都会から帰った夫の弟ペートゥルが戻って来ます。

ペートゥルは、羊頭の子供アダを見て当然の反応を示しここからいよいよ何かしら展開があるのかと期待をするも何も起こらず、平凡な日常が淡々と描写されていきます。

常にどんよりとした雰囲気なんですがそこに描写されるのはほのぼのとした家族の平穏な暮らしです。

前述したガッカリなアダのビジュアルも慣れてくると何処か可愛らしくほのぼのとした空気感に一役買っていて、制作側の狙いだったのかと思わされたりします。

そんな平穏な雰囲気の中、時々、マリアが母羊を殺したり、ペートゥルがアダを殺そうとしたり、マリアが母羊を殺した場面を目撃したペートゥルがそれをネタにマリアの身体を求めたり不穏な空気が流れるんですが何事もなくホッとする、その一方で何処かガッカリとさせられる。

そんな平穏と不穏の繰り返しがラスト付近まで続きます。

ラストはと言うとアダの父と思われる羊頭の獣人が現れイングヴァルを銃で殺しイングヴァルに寄り添うアダを半ば強引に連れて行きます。

都会に戻るペートゥルをバス停に送り届けたマリアが銃声を聞いて倒れたイングヴァルのもとに駆けつけた時にはアダはいなくなってて、その時に彼女が周りを気にするような表情をした後にどこか安心したような表情で幕を閉じます。

このラストの意味が良く理解できなかったんですが、あるレビューになるほどってことが書いてあってマリアはこの時イングヴァルの子を身籠っていたとの事でそう言われると確かに心当たりが。(洞察力が違いますね)

つまり亡くしてしまったアダのかわりをしていた羊のアダがちょうど妊娠したタイミングで都合よくいなくなったのを確認した上で密かに幸せを噛み締めている表情って取ると怖すぎです。

あ、あとひとつ気になったのがイングヴァルが獣人に殺される前だけ穏やかに晴れていたように思ったんですが何か意味があるのかはわかりません。

で、この作品が何を伝えようとしてるのかって言うと難しいんですが、マリアが母羊を殺したりするのはどうかと思うけど、ペートゥルがアダに草を食べさせる場面なんかある意味普通のことなのにイングヴァル達の状況からすればタブーになるし、羊がただ呼吸してるだけの映像やちょっとした物質に卑猥な妄想を抱いたり、人間は価値観や見方の違いでどんな風にもなれる怖さみたいなものが伝わってきました。

宗教的なものは凄く意識して取り入れてあるんだと思いますけど個人的にその辺りのことはフワっとしか理解できてないです。

そんな深く考えなくても良い意味で掴みどころのない味わい深い作品で今までにないタイプのものでした。

淡々と話が進むので好き嫌いは分かれそうだけど「ミッドサマー」なんか好きな人は面白く感じるのではないでしょうか、それ以外の人が観ても新鮮だと思います。

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