「ジョジョ・ラビット」や「マイティソーバトルロイヤル」「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」のタイカ・ワイティティ監督のイタいカップルの恋愛模様を描いた作品「イーグルVSシャーク」本人が主人公の友達役として出演してたり、コメディアンと言うこともあり笑いのセンスに溢れた作品です。
監督:タイカ・ワイティティ
脚本:タイカ・ワイティティ
キャスト
リリー(ローレン・ホースリー) ジャロッド(ジェマイン・クレメント)他・・
「イーグルVSシャーク」あらすじ
ハンバーガーショップで働く地味な女の子リリーはジャロッドと言う客に片思いしているが、どう見ても彼は冴えないどちらかと言うとオタク系男子である。
そんなジャロッドはいつもリリーには目もくれず派手めなリア充ジェニーに注文する。
仕事が終わるとバックヤードにスタッフ全員集められそこでリリーは店長にあと1週間で解雇と宣告される。
翌日いつも通り正午に来店したジャロッドはジェニーが休みなので仕方なくリリーに注文をする。
彼女は嬉しさの余りポテトをサービスすると、それがきっかけでジャロッドはあくまでジェニーを招待したパーティーのチケットをリリーに託すのだった。
ジェニーはオタクのジャロッドの誘いに乗るはずもなく、リリーは棚からぼた餅でジャロッド主催のゲームパーティーに参加する。
リリーは経験のない格闘ゲームでまさかの決勝に進むとチョンピオンのジャロッドと対戦しわざと負ける。
そのままパーティーが終わってから一緒に過ごしてるうちに成り行きで関係を持ってしまう2人。
翌日、デートの約束をするもすっぽかされたリリーが家にいるとジャロッドが何事もなかったように訪ねて来る。
そこでジャロッドは高校時代にイジメられてて、そのイジメっ子は卒業後にいなくなったけどまた帰ってくる上に、そのお祝いのパーティーの主催をやらされそうだとリリーにこぼす。
ジャロッドはそんな事をやるくらいなら復讐をすると故郷に帰る決心をすると、仕事を辞めたリリーもそれに付き合う事になり、兄の運転でジャロッドの故郷を目指すのだった。
「イーグルVSシャーク」感想(ネタバレ)
全編シュールでバカバカしい笑いに満ちててこのノリが好きな人には楽しめるんだけど嫌いな人には冒頭から惹かれそうな作品です。
ストーリーはと言うとイタいカップルが彼の故郷に帰ってワチャワチャしてるうちに成長して都会に戻ると言うものです。
ラブコメなんだけど恋愛要素よりも完全に笑いに振り切ってて、よくわかんないうちにお互いの心情に変化が起こったり、なんで急にそこで別れ話になるの?とか突然奇特な行動をとったり訳がわかんない
何処か腑に落ちないけど、シュールな笑いを繰り返してるうちにいつの間にか成長して恋人やその家族も良い方向に変わってました。
みたいな内容です。
で、観終わった後はなぜか納得してしまってるんで、何も考えずにシュールな笑いを繰り返してるようで意外と計算はされてるんですかね。
で、そんな怪しい作品の主人公のカップル2人はと言うと。
リリーは地味な見た目でジャロッドに片思いをしながら彼との恋愛を妄想してて、職場では邪魔者扱いされリストラ要員としてクビになります。
映画の中ではイタい奴な扱いですがやってる事はジャロッドと自分を題材に作曲したりごく普通です。
一方ジャロッドは外見は昔のオタク見方によっては(UKロックのアーティストに見えなくもない)のような中々のインパクトで行動もメチャクチャ怪しい、完全にコントに出てくるキャラのようで実際にいたら絶対ヤバいヤツです。
ニュージーランドには本当にこんなのいたりして(笑)
内面もプライド高そうで、ええ格好しいでマウントを獲ってくる質でリリーが自分に好意を持ってるから調子に乗ってるのか時々、送る流し目とかキモくて完全に勘違いしてるイタいヤツです。
そんな流し目野郎はナンパもすればゲームパーティーも開くし会ったばかりでエッチもするし、ジャロッドの恋愛遍歴にいたっては「ある種リア充なんじゃね」って思えました。
でも恋愛関係以外は病んでて優秀な兄の陰で父にないがしろにされた経験を引き摺っている可愛そうなヤツです。
そんなジャロッドが何の取り柄もなさそうな地味な女子リリーと交際していくうちに、彼女の無償の愛に救われていきます。
ポテトをサービスした事がきっかけで2人はゲーム大会で急接近するわけですが、このゲーム大会がまたあやしい。
動物の被り物を被ってストリートファイターを自分で勝手にアレンジしたみたいなクソゲーで盛りあがる様子はバカバカしくて笑えます。
ゲーム大会の夜になんとなく結ばれた2人、ジャロッドに想いを寄せひょんな事から交際することができたリリーは、彼に嫌われまいと多少の横暴にも寛大てす。
翌日、リリーの家を突然訪ねてきたジャロッドは高校時代のイジメっ子に復讐をすると告げると、その場の流れでリリーと彼女の兄のデイモンも一緒にジャロッドの故郷に向かうことになります。
ジャロッドの実家に着くと父親や姉夫婦や義理の弟、そして隠していたジャロッドの娘が共に暮していました。
ジャロッドは悪びれるでもなく復讐に向けて特訓します。
娘の存在を知ったリリーの方も深く追求せず復讐に燃えるジャロッドの特訓を眺めてるんですが、この特訓がまたふざけててバカバカしいノリの無意味なヤツです。
そこに死んだ兄ゴードンの元恋人のトレイシーが訪ねてきます。
おそらくこの時にジャロッドの心情に変化があったと思ったんですがわかりにくいです。
この後ジャロッドはリリーに別れ話しを切り出すんですがそのことからもそれが伺えます。
リリーは家に帰ろうとバス停に向かうんですがあいにく次のバスは3日後で仕方なく彼女は滞在を延ばします。
彼女はジャロッドの父親と娘と散歩しながら岬の方に行くとそこでゴードンが自殺したことを知ります。
「兄は子供を救って焼死した」と聞かされていたリリーはジャロッドの嘘に腹を立てながらも我慢して彼の様子を影でこっそり見守っているとトレーシーと特訓している現場に出くわします。
木陰からこっそり覗くリリーは自分が触った時には怒られた「手の形をした大切なロウソク」をトレーシーには惜しげもなく見せつけるジャロッドに怒りを覚えますが、どこか吹っ切れたようにジャロッドの家に帰ると家族とともに夕食を食べるのでした。
このシーンでテーブルを囲んで家族にジョークを言って場を和ませるリリーの様子を、特訓から帰ってきたジャロッドが羨ましそうに見つめるんですが、ジャロッドと家族、特に父親との希薄な関係が垣間見える瞬間でもあります。
翌朝すっかり家族と打ち解けたリリーは父親と話しているうちに死んだとされていた母親がレズビアンでオーストラリアに住んでると聞かされ、またもジャロッドに騙されていたと憤慨します。
公園で怒りを発散した後、姉夫婦に誘われたパーティーに参加したリリーは、すっかり吹っ切れた様子で家族や周りの皆を巻き込んで楽しみます。
これまで自信がなく周りに遠慮してばかりだったのに今はありのままの自分を曝け出しそれが皆に受け入れられています。
その姿はどこか輝いて見えて遠巻きに見つめるジャロッドは自分が置いてけぼりになったような寂しさすら覚えていました。
寂しさで嫉妬したジャロッドとリリーの心はすれ違ったまま決闘の日の朝を迎えます。
リリーは父親のもとを訪ね父親の知らないジャロッドの良い面を語ります。
それを聞いた父親はこれまでの自分が優秀な兄ばかりに愛情を注いでジャロッドのことはおざなりにしてた事に気付きます。
リリーは彼の故郷で家族と暮らすうちにありのままの自分を曝け出すことができて、それは結果的にジャロッドと彼の父親の関係を取り持つような心の豊かさを手に入れるのにも繋がったのでした。
親子の距離を縮めることに成功したリリーは父親と皆が待つ決闘の場へと現れます。
皆が待つ中、現れたエリックは高校卒業後8年の間に変わり果て足が不自由になり車椅子に乗っていました。
ジャロッドは信じられない様子でしたが彼が詫びを入れるのを見て拍子抜けしたように家族やリリーの顔を一瞥すると、
エリックに近づき仲直りをするのかと思った次の瞬間、ジャロッドはヌンチャク攻撃を仕掛け地べたでもみ合いながら最終的には馬乗りでやられてしまいます。
家族の前で無様な姿を晒しながらジャロッドはその場を逃げ出します。
そんな何処までもクズなジャロッドをリリーは追いかけ岬に行くと、身も心も打ちのめされ消え入りたい思いで行く宛もなく寝袋のままゴロゴロと寝転がりながら逃げ回る姿を見つけます。
一度、岬の断崖の上から下を見るも飛び降りる勇気もなく再びモゾモゾ尺取り虫のように逃げ回るジャロッドを追いかけリリーも寝袋で這い回ります。
付いてくるなと最後までちっぽけなプライドをかざすジャロッドを優しく包み込むようにリリーは「私達、同じ場所にホクロがあるのよ」と彼の口元のホクロに触れるのでした。
自分でも気づかなかった本当の自分の姿に気づかせてくれた上、ありのままの自分を優しく受け入れてくれるリリーに救われたジャロッドは翌朝、帰路に着くリリーをバス停で待ちぶせしてました。
彼は大事な「手の形のロウソク」とユリの花をリリーに手渡します。
きっと彼なりの愛の告白なんでしょう。
バスに揺られながらリリーの隣でにこやかに馬を数えるジャロッドはありのままの自分を少しだけ愛せるようになったのかも知れません。
この作品、笑えるんだけどどうしても腑に落ちずAmazonプライムで二度見しました。細かい事気にしなきゃ普通に良い話ですけど。
知り合いのハッカーメイソンのPCがメチャクチャ型遅れとか、シリアス気味な場面の音楽が義理の弟が練習するギターの音とか、シュールなお笑い要素にばかり気を取られてるうちいつの間にかハッピーエンドを迎えてて「うーんなるほどね〜」くらいだったのが
2回目ではちょっとしたきっかけで起こる心情の変化などがわかりました。
ジャレッドを演じたジェマイン・クレメントは「メン・イン・ブラック3」でも評価をされてコメディアンでもあります。
ジャレッドのシュールで独特のキモキャラもハマるわけですね。
リリーを演じたローレン・ホースリーは撮影当時、タイカ・ワイティティ監督のパートナーだったらしく脚本も共同執筆してるそうです。
独特の演技とリンゴを2人に置き換えたような表現や寝袋で追いかけっ子してるようなシーンも映像美と言うかポップな雰囲気でいい味出てました。
始終ふざけてるんだけど、主人公2人を通してありのままの自分を曝け出した方が幸せな人生を送れると言った事が伝わってくる作品でした。
序盤でリリーが「サメは遠くの傷ついた獲物を嗅ぎ分ける」と言う内容のテレビを観てるんですが、サメのリリーはまさに傷ついたワシ、ジャロッドを見つけたんだと思いました。
シュールでおバカでアヤシくどこか優しいラブコメ作品、こんなノリの笑いが好きな人は楽しめると思います。
もしくは試しで観るのもありだと思いますよ。
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