映画館の予告で気になってた三池崇史監督の「初恋」バイオレンスなラブストーリーを期待せずにはいられません。
感想やあらすじ魅力を紹介していきます。
監督:三池崇史
脚本:中村雅
キャスト
葛城レオ(窪田正孝) モニカ(小西桜子) 加瀬 (染谷将太) 大伴(大森南朋)
ジュリ(ベッキー) 権藤(内野聖陽) 組長代行(塩見三省) 市川(村上淳)
堺(滝藤賢一) ヤス(三浦貴大) 竜司(谷嶋颯斗) ワン(顔正國)
フー(段釣豪) チアチー(藤岡麻美) 他・・・
「初恋」あらすじ
舞台は新宿歌舞伎町、親に捨てられ人生に何も見い出せずただ漠然とボクシングを続ける葛城レオは、何となく試合をしながら惰性で生きていた。
レオはボクサーとしての実力はかなりのものを持っていたが試合に勝ってもどこか空虚で、喜びもせずただその事実だけを受け止めた。
ボクシングの傍らで中華料理屋でバイトをする毎日。
そんなある日、試合を優勢に進めていたレオだったが、たった1発のラッキーパンチにダウンそのまま気絶してしまう。
あるアパートの一室、瞳孔が開いたような目で死人のように横たわる1人の少女モニカがいた。
父親が借金した挙げ句に売人のヤスに売り渡され、クスリ漬けにされ商売をやらされてるようだ。
父親に弄ばれていた彼女は、同級生の竜司に助けてもらった事があり、クスリが切れると竜司や父親の幻覚に襲われる。
竜司の名前を叫んで取り乱すモニカをヤスの恋人のジュリが蹴飛ばし大人しくさせる。
とある横丁の焼肉屋で肉をつつくヤクザの加瀬、そこへ悪徳刑事の大伴がやってきた。
加瀬は大伴に、クスリの横流しに強力して欲しいと切り出す。
体裁を取り繕っていた大伴だったが徐々に本性を曝け出し売上を折半すると言う形でその場を後にした。
遅れて加瀬も店を出るが1人の人物が彼を尾行していた。
その人物は同じ組織の幹部城島であった。
果たして城島の狙いは!?
一方、試合で突然気絶したレオはMRI検査を受けた結果、脳に腫瘍が出来ている事を知らされる。
レオが余命宣告された頃、歌舞伎町の一角では加瀬と大伴が計画を実行に移し始めていた。
モニカをクスリを奪った犯人に仕立てあげる為に大伴は客を装って彼女を呼び出す。
モニカが仕事を終えるのを車で待つジュリ、そこに突然、中国人のチンピラが襲いかかる!
チンピラは加瀬の支持でジュリを始末する気だ。
大伴と連れ立って歩くモニカは突然例の幻覚に襲われ逃走する。
一方、医者から突然、死の宣告を受けたレオは途方にくれ夜の歌舞伎町を力のない足取りで彷徨っていた。
そこに逃げてきたモニカがすれ違い様にぶつかる。
「助けて!」と言う声にレオはさすがボクサーと言った反応で大伴を殴って気絶させる。
倒れた大伴の傍らに警察手帳が落ちているのを見て戸惑うレオだったが、モニカに巻き込まれるように共犯者として追われる立場になってしまうのだった。
どうにか追手を逃れた2人は街の片隅の駐車場で座り込んでいた。
事情を何となく把握したレオは行くあてのないモニカを一度は見放そうとするが思い留まって助ける事にする。
加瀬は計画を実行に移すが順調に進むと思われたプランはことごとく失敗、クスリだけを何とか手に入れるという納得の行かない形で幕を閉じる。
一方、加瀬の策略から逃れたジュリはアパートに戻るがヤスは殺されていた。
ジュリの知らせを受けた組織は真っ先に対立しているチャイニーズマフィアに疑いを向け、若頭の権藤を始めとする組員たちは報復に乗り出す。
事の真相を知る2人を除いては。。
そのうちの1人は加瀬を尾行していた城島だ。
どうやら城島も組織を裏切りチャイニーズマフィアにクスリを横流しする狙いがあるようだ。
レオとモニカは静かな神社の境内にいた。
父親の借金のために、またもとの暮らしに戻ろうとするモニカを余命の限られたレオは折角生きてるんだから未来を見るようにと説得する。
そんなレオに心を許したモニカは本名のユリという名前を明らかにした。
生きる目的をなくしたレオはどうせなにもないなら少しでも励みになればと竜司に会いに行こうと誘うのであった。
その頃ヤスのアパートでは組員たちが必死にクスリを探していた。
ヤスを殺した挙げ句クスリを盗んだ張本人の加瀬もその場で知らん顔を決め込んでいる。
共犯者の大伴の警察手帳を持つモニカを一刻も早く捕まえたい加瀬は、生きてられては都合が悪いとジュリを始末しようと試みるも失敗、組織に裏切り者だと言うことがバレてしまう。
モニカの実家を訪れた2人を追ってチャイニーズマフィア、加瀬、大伴、日本のヤクザの四つ巴の抗争が勃発!
権藤に片腕を斬り落とされたチャイニーズの親玉ワンも出所して参戦、極限のバトルは、カタギのレオ達までも巻き込んで最終決戦の舞台に突入するのであった!
「初恋」感想(この先ネタバレあり)
初恋と言うタイトルに良い意味で騙された感もある今作、「それなりにラブシーンもあるのかなぁ」なんて気持ちで観るとコメカミにガツンと一撃喰らいます(笑)
冒頭からボクシングの試合のシーンに茶々を入れるかのようにグロ映像がブチ込まれたりして個人的に期待値アップさせられ
そんな夏の夜のワクワク感のような気持ちは最後まで消える事なく持続するのでした。
最後に出会った、最初の恋と言う触れ込みだったと思いますが、解釈は人それぞれ、
ある意味で汚れを知らない2人の純愛が初恋そのものでハチャメチャなバイオレンスに程よい清涼感を与えてくれます。
和製トゥルーロマンスって雰囲気です。
また全編に渡って散りばめられたコメディ要素もこの作品の魅力のひとつです。
ストーリーの軸となる事件を画策する2人、加瀬と大伴の掛け合いは刑事の大伴が完全にヤクザ以上にヤクザっぽい、
加瀬は策士策に溺れるを体現するかのようにことごとく計画が失敗するんだけど、必死でそれをフォローする姿が情けなくて面白い、
ヤクザの面々も見た目と裏腹、コミカルな行動をとったり、
当人にしたら怖いんだろうけどモニカのパンツ1丁の父親の幻覚もどこかしら間抜けな雰囲気だし、思わず笑っちゃうシーンが満載でした。
個人的なツボはネタバレしちゃいますが、
最後のバトルの直前にレオの腫瘍が誤診だったと言う4件の留守電を確認するシーンです。
武装した面々の緊張感漂う映像のバックで、滝藤賢一さん演じる医師の申し訳なさそうな声のメッセージが流れるアンバランスさは爆笑ものでしたww
ある意味ありふれた日常と非日常が一緒になった空間を表現しているようにも感じられます。(場所もホームセンターだし。しかもロケ地がうちの近所w)
また、この作品のもうひとつの魅力はアクの強い登場人物なんですが、それを演じたキャストが豪華で主役の窪田正孝さんは勿論、脇を固める役者さんも若手からベテランまで豪華な顔ぶれが揃ってます。
そんなキャスト達が個性的な演技で尖ったキャラクターを熱演します。
「初恋」キャストの染谷将太とベッキーが凄い!
特にインパクト強かったのがヤクザの加瀬を演じた染谷将太さんとジュリ役のベッキーさんです。
染谷さんの演じたずる賢くどこか頼りない唯一無二のヤクザキャラはある意味主役と言っても良いくらいの存在感だし、
ベッキーさんはこの作品で新境地を見いだされたと言っても良いくらいブッ飛んでました。
悪知恵の働く策士のヤクザ加瀬、染谷さんだからそうなったのか分かりませんが、
ただの策士では収まらない掴みどころのないキャラでそれを見てるだけでも退屈しなかったです。
こんな面白いヤクザいないだろ!くらい始終ふざけてる(笑)
後半でベッキーさん演じるジュリに腹を刺されるんだけど
クスリの入った袋が破れたのを良いことに、傷口にクスリを擦り込んでキメまくるとこなんか最高の表情でしたww
その後も銃弾を2〜3発喰らい、腕1本落とされるんですが、ドンギマリで痛みを感じないゾンビ状態になってると言うくだらなさ
最後は首を切り落とされるんですが、生首になっても爽やかに微笑んでると言う最後までふざけまくりのキャラでした(笑)
目の前に転がってきたその生首を見て「いい顔してんじゃねえか」と話しかける大森南朋さん演じる大伴もイカれてて良かったです。
そして、ベッキーさんは三池監督が見抜いていたのかジュリ役が見事にハマってました。
一途に想った恋人のヤスを殺され復讐の殺人マシーンと化すんですが、まぁ口が悪い
「ぶっ殺す!」とシャウトするのを何度聞いたかってくらい聞かせてくれます。
しかも最初に襲われた中国人のチンピラを蹴り殺す攻撃力、モニカも冒頭餌食になりました(-_-;)
何度殺されそうになっても死なないタフさも兼ね備えてる野獣のようなキャラは観た人達の記憶に鮮明に残ったことでしょう。
気絶してる間に火を放たれるんですが「アッチイーー!」と飛び起きるやスーパーマリオのようなポーズでガラスを突き破り「アイツがやったんかよぉぉー!ウワァァァーー!!」と裸足で組事務所に駆け込みます(笑)
犯人の加瀬を追ってモニカの実家に向かい、車で道路に検問を張って加瀬達の車を待ち伏せするんですが、
巨大なバール片手に後部座席から出てくるジュリの姿は用心棒さながらの貫禄を放ってました。
悪く言えば鉄砲玉なんですが女だてらに気合いの入った武闘派を演じられてました。
女の武闘派と言えばチャイニースマフィア側のチアチーも印象的でした。
武闘派として凄腕の彼女は、権藤と同じように仁義を重んじる古いヤクザの世界に憧れて日本に来たわけですが、
時代は変わってヤクザの世界もグローバル化で共存共栄。
そんな彼女は最後にカタギのレオがモニカを死ぬ気で守る姿に男気を感じます。
演じたのはディーン・フジオカさんの妹、藤岡麻美さんでこちらもはまり役でした。
「初恋」ラストは?
ホームセンターでの四つ巴の最終決戦はバトルロイヤルの様相を呈し皆壮絶な最期を遂げる中、
生き残ったのはレオ、ユリ(モニカ)、権藤、ワン、フー、この辺りから三池監督お得意の任侠映画テイストにシフトして行きます。
やはり最後の死闘はその方がしっくり来ますね。
権藤とワン、抗争の発端となった2人の因縁の対決は銃撃戦に始まり、剣戟へ、深手を追う2人の実力は拮抗して遂に素手での肉弾戦へと突入します。
肉弾戦を制したのはヤクザの権藤、組み合ったワンの背骨をへし折ると、倒れたワンに日本刀で魂神の一撃を突き立てます。
内野聖陽さんと顔正國さんの白熱のバトルはまさに任侠映画でした。
レオはフーにユリを人質に取られ窮地に立たされるんですが、そのタイミングで父親の幻覚がラッキーパンチとばかりに功を奏します。
パニックになったユリがフーに不意打ちの金的を入れたことで形成は逆転、レオは徐々に攻めて遂にフーを倒します。
そこに現れた権藤はかろうじて立っている状態でレオに車の運転を託し想像を絶する方法で脱出を図ります。
映画ならではってシーンだけど賛否ありそう。
3人の車内で権藤はレオと言う名前が印象的で記憶していた負け試合のことを口にした後
良かったらNo3でウチに来ないかとレオをスカウトするんですがレオはボクシングを続けたいと断ります。
そんなやりとりも昔ながらの武闘派って雰囲気です。
無数のパトカーを先導するようにレオ達の車は逃走を続ける中、クスリを車から捨てるよう権藤は支持を出します。
誘惑を断ち切るようにユリが窓を開けるのを見てレオもホッとした様子でニヤリ、2人はありったけのクスリをばらまくというロードムービーの一幕のようなシーンがあるんですが
凄く好きなシーンで2人が暗い過去に決別するようなものを感じました。
クスリの粉が煙幕になってパトカーは次々クラッシュして3人の車は公園に逃げてきます。
そこで権藤は1人車で去っていきます。
朝の日差しの中、再び無数のパトカーに追跡されながら権藤は「極道に朝陽は似合わねぇ」と呟くと
そのまま意識は薄れていき制御不能になった車は蛇行しながらパトカーを引き連れ太陽の光に向かって消えて行くのでした。
昭和のハードボイルドドラマのような権藤の最期なんですが後半は任侠度高めで内田さんの渋い演技が際立つパートでもありました。
主人公レオとユリは権藤と別れると公園でこの一夜で浴びた血を洗い流します。
ずぶ濡れの2人は朝の陽の光で身体を乾かしながら踏切り待ちをしていると、線路を挟んだ向かい側の夫婦と目が合います。
なんとそこにいたのは同級生の竜司でした!
隣にはお腹の大きな奥さんと思われる女性もいます。
竜司と奥さんはずぶ濡れのユリ達を心配して気にかけますが、ユリは何か決心したように「おめでとうございます。」と告げると竜司もありがとうと答え
レオとユリは心配する2人のもとをあとにするのでした。
ユリにしてみれば人生における初恋に違いないんですが、初めて優しくされた人と言う意味合いで好きになったんだと思います。
そんな初恋にけじめをつけたユリはまっさらな状態に生まれ変わり、今度は恋愛対象としてレオに恋をしたんじゃないでしょうか
「生きてみる」とレオに気持ちを伝えると、レオもそれに答えるように「行くとこなければ汚いけど家に来いよ」と伝えます。
一晩にして人生のあらゆる価値観を覆されたレオもまた、過去に決別し再びボクシングと真剣に向き合う決心をします。
久しぶりの試合に望むレオは勝利を収め、ユリも施設で必死に薬物と戦います。
季節は流れ雪の降る中2人は仲睦まじくアパートに帰っていきました。
ハチャメチャなバイオレンスが嘘のように最後はホッとする日常で締めくくられます。
そんなジェットコースターのようなスリリングな映画が観たい人にオススメの作品です。
ヤクザ、バイオレンスが苦手な人は厳しいと思いますが。。
以上、「初恋」のあらすじや感想、魅力やキャストの染谷将太さんとベッキーさんにクローズアップした記事でした。
最後までお付き合いくださりありがとうございます。
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